コーヒー栽培は、曽祖父から祖父、そして父親へと代を重ね、エジーニョへ引き継がれた。エジーニョは畜産やその他の作物には全く興味は無かった。興味のあったのは、若い時から彼の回りの土地にあり、利益が上がる可能性があると感じていた、まさにコーヒー栽培そのものであった。
エジーニョは、3年前に最初のスペシャルティ・コーヒーのロットを生産し、既に2度、それらのコーヒーをスペシャルティとして販売した、同地域に於けるスペシャルティ・コーヒー生産の先駆者である。
フォルキーリャ・ド・リオは、良品質のコーヒーの産地として知られていたが、以前はロットの評価による適正な価格で取引されていなかった。しかも確かな評価基準もなく“良い”コーヒーか“悪い”コーヒーかとの判断のみで売られていた。それ以外にもフォルキーリャの生産者達はスペシャルティ・コーヒーやマーケットについての知識もなかった。言わば販売の時の価格は、仲買人の言い値であった。
販売等と関係なく、エジーニョは既に従来のコーヒーの栽培とは一線を画す、幾つかの方法を採り入れていた。彼のコーヒー園は、高い標高で寒い場所に位置するので、コーヒー樹は、非常に不均一に生育し、一年のうちに何度も開花し、実もバラバラに熟す。その為に、熟成豆と青実の双方を失わない様に、エジーニョは、適度に熟した豆だけを選びながら、いつも手摘みで収穫する。それは手間取る仕事であるが、熟した豆のみが良い味を作り出し、自然とその作業は品質の向上につながっている。フォルキーリャ地域に位置する農園では、コーヒー園での遅咲きになる3月開花は普通である。少し前に、これら3月開花の実をカッピングしたところ、味と香り共に格別な特徴をもつ非常に高品質のコーヒーであることを発見した。他の生産者と同様に、その発見によりエジーニョは収穫に機敏に対応し、特別の注意を払いながら作業を行う様になった。なぜなら実は熟すのが早く、“カフェ・デ・ラップ” (土の上に落ちた低級の熟し過ぎの豆)に変化する可能性があるからである。また彼は、遅咲きの開花から出来た豆は、スペシャルティ・コーヒーの特徴を逃さない様に別に袋詰めする。
エジーショの畠には、自然的な特徴があり、収穫の際に選別を行う。しかし、それだけが彼の秘策ではなく、品質改善の為に、取扱い方法を変えたり、知識を吸収したりして、更に実践面での磨きをかけている。
ある大きな変化は、同集落にコーヒーの皮むき機が導入された時であった。以前、エジーニョは、収穫したコーヒーを畠から乾燥場まで運んで、そのまま乾燥していたが、皮むき機の導入後、乾燥する前に皮むき機を通し始める。
コーヒーの皮むき作業で、熟した豆は、ボイア(悪いコーヒーの粒)や、あらゆる未成熟豆と分別される。さらに選別された豆はは、別々に乾燥され、 それぞれ異なった特徴によりロット分けされ、品質を向上させる。
その他の変更点としては、コーヒーの味を損なし、如何なる発酵も避けるため、乾燥中に雨や湿気がかからない様、ハウス内での豆の乾燥を始めた。
エジーニョは、ブラジルの環境保護法による制限を気にかけてではなく、環境には重きを置く。彼は農薬を散布しないし、除草剤はコーヒー園の宇根間の手入れを容易する為だけに、一年に一度の散布に抑えている。それ以外は草刈機で栽培地を管理している。草刈りで仕事が約60%も減ったのでこの方法を通していると彼は言う。
エジーニョは既婚で、ジェルバーナと呼ばれる娘がいる。彼の妻ジェシカは、地域の診療所で看護師として働く。畠仕事の他の手伝いや、コーヒーの加工工程で忙しい場合に兄弟に仕事を代わってもらう以外、大方の時間は、エジーニョ1人だけで働く。 |