一族が農場を離れるきっかけは、ジェツリオ・バルガス政権の時のコーヒー価格の暴落であった。当時、ゼ・エミリオの父親は、町で働くために農園を去り、町で彼ら3兄弟を育てた。
ゼ・エミリオが、この田舎へ戻った時、金銭的なものではないが、一族の遺産を受け継いだ。そして彼はコーヒーを植えること決心をした。
今までの人生において彼は何時も自然を求めていた。老後は、健康を保ち、自給自足し、澄んだ空気を吸い、新鮮な水が飲める、のどかな場所で生活することを望んでいた。
コーヒーを植えることは彼の計画には無かったが、何かが自然とそうさせた。
彼の農園のある地域は、もともとコーヒー栽培の適地であったが故に、彼は栽培に興味を持ち、地域の人々に栽培方法を聞いたり、多くの文献を読んだりしながら、この仕事に従事すると決めた。
最初は栽培や販売をするのが大変だったが、やり方を覚えるのに、それほどの時間は要しなかったと彼は言う。また当初から、彼は農場でスペシャルリティ・コーヒーの生産を考えていた。
彼の収穫のポイントは選別である。すなわち理想的な状態で適度に熟した実のみを手摘みで収穫する。
今年、彼は4回の収穫に成功した。大変手間はかかるが、この方法は、香りと味が引き立つ高品質のコーヒーを収穫するための最良の方法である。 ある農業技師の助けを借りて、土壌分析を行い、養分バランスが崩れない様に肥料設計を行う。
収穫後の作業では、更にパルパーにかけ熟成した実、青実(手摘みの際に混ざってしまったもの)や、枯れた実“ボイア” (低品質の可能性がある実)の選別を行う。その後、温度と水分を調整するためのハウスで乾燥される。それらの粒は、マイクロ・ロットとしてカッピングできるよう圃場ごとに分けて袋詰めされる。この様にして最良の品質のものを選別していく。袋もまた他とは違うものを使用しており、より長い間、コーヒーの香りと味を保つことが出来る。一連の注意深い作業はコーヒーの品質をより向上させる。ゼ・エミリオ、パートナーの歩合農夫ジョジマールと彼の妻リリィにより、これらの全ての作業が行われている。
ゼ・エミリオは、コーヒー栽培や農園の発展と、そして彼の周囲の人々が健康な人生を送れることを信条としている。彼は常に、自身の健康管理と同様、パートナーや彼を取り巻く自然環境へ配慮しながら行動している。全ての食べ物は自給自足している他、彼の家では太陽光発電を利用し、食べ物と同じように、如何なる農薬も彼のコーヒー園では使用しない。また健康的に養分を土壌中に取り込めるようコーヒー園の中で緑肥を植え、遺伝子組み換えでないトウモロコシを餌とするニワトリを放し飼いにして、コーヒー園内の害虫駆除と施肥にも役立っている。農園内の栽培地には、果物の木や自然の灌木があり、生物多様性も保たれている。
その他、医師として仕事というわけではないが、日々の出来事のなかで、働く人の安全や健康には気を使っている。
ゼ・エミリオとそこで働く全ての人は、日よけ、耳栓、プロテクター付きの帽子などの安全を確保するための器具を使用している。
他の生産者とは異なる手法と、その着実な実践の結果が現れ始めている。僅か1年の経験と努力ではあるが、ここのコーヒーは品評会で賞を獲得した。まさにゼ・エミリオ、リリとその夫ジョジマールの大きな賜物である。 |